★ 第6回  ★


◎怨歌行 『文選』巻27◎
◎聞夜砧 『白氏文集』巻19◎
誰家思婦秋擣衣 誰が家の思婦秋衣を擣つ 月苦風凄砧杵悲 月苦さやかに風凄まじくして砧杵ちんしょ悲しむ 八月九月正長夜 八月九月正に長き夜 千声万声無了時 千声万声了る時無し 応到天明頭尽白 応に天明に到らば頭尽く白かるべし 一声添得一茎糸 一声添へたり一茎けいの糸 どこの家の思婦(遠地の夫を待つ妻)であろうか、月が冴え風が凄まじい夜に、 悲しげな音を立てて砧を打っている。今や八月九月の夜の長い時なのに、千回一 万回と、その音はやむことがない。こうして夜明けまで聞かされたら、我が頭髪 はことごとく白くなってしまうであろう。あの一つの音が、一本の白髪を増すか と思われる。