★ 第13回  ★


  6−341  手習
 亡きものに 身をも人をも思ひつつ 棄ててし世をぞ さらに棄てつる
(我が身をも、また思いを寄せた人をも、もうこの世にいないものとあきらめて、
一度棄ててしまったこの世を、さらにまた捨ててしまったことよ)

 6−361  手習
 尼衣かはれる身にや ありし世の かたみに袖をかけてしのばん
(尼衣の姿に変わり果てたこの身に、このはなやかな袖をうちかけて在俗のころの
昔をしのぶことにしようか)  

 6−300 53手習「(小野の尼宮)かぐや姫を見つけたりけん竹取の翁よりもめ
づらしき心地するに、いかなるもののひまに消え失せんとすらむと、静心しづごこ
ろなくぞ思しける(小野の尼君は、かぐや姫を見つけたという竹取の翁よりもさら
に珍しい心地がするので、どうかした隙にでも消え失せてしまうのではないかと、
落ち着かぬお気持ちであった。)」

  源氏物語中、出家を遂げた女性
 藤壷、六条御息所、空蝉、朝顔、朧月夜、女三の宮、浮舟

 6−335 53手習 浮舟遂に出家
「(浮舟)世の中にはべるとも、例の人にて、ながらふべくもはべらぬ身になむ
(この世におりましても世間並みの気持ちにはなれません−左近少将との縁談もこと
わられ、薫・匂宮との尋常な結婚生活ができなかったことを指す−で、所詮は生きて
いられそうもなく存ぜられますので)」「(僧都」(女の若くしての出家はかえって
罪業をつくることになる)年月ふれば、女の御身といふもの、いとたしだいしきもの
になん(当座はいかに堅固であっても、年月がたつと、女の御身というものはまこと
に多難なものでして)」

  6−379 54夢浮橋
 「(横川僧都)髪、鬚を剃りたる法師だに、あやしき心は失せぬもあなり、なして
女の御身はいかがあらん、いとほしく、罪えぬべきわざにもあるべきかな(髪や鬚を
剃ってしまった法師ですら、あらぬ煩悩は捨てきれない者もあるそうな。まして女の
御身ではどんなものであろう。困ったものよ、罪作りなことになりかねまいな。)」