6−341 手習 亡きものに 身をも人をも思ひつつ 棄ててし世をぞ さらに棄てつる (我が身をも、また思いを寄せた人をも、もうこの世にいないものとあきらめて、 一度棄ててしまったこの世を、さらにまた捨ててしまったことよ) 6−361 手習 尼衣かはれる身にや ありし世の かたみに袖をかけてしのばん (尼衣の姿に変わり果てたこの身に、このはなやかな袖をうちかけて在俗のころの 昔をしのぶことにしようか) 6−300 53手習「(小野の尼宮)かぐや姫を見つけたりけん竹取の翁よりもめ づらしき心地するに、いかなるもののひまに消え失せんとすらむと、静心しづごこ ろなくぞ思しける(小野の尼君は、かぐや姫を見つけたという竹取の翁よりもさら に珍しい心地がするので、どうかした隙にでも消え失せてしまうのではないかと、 落ち着かぬお気持ちであった。)」 源氏物語中、出家を遂げた女性 藤壷、六条御息所、空蝉、朝顔、朧月夜、女三の宮、浮舟 6−335 53手習 浮舟遂に出家 「(浮舟)世の中にはべるとも、例の人にて、ながらふべくもはべらぬ身になむ (この世におりましても世間並みの気持ちにはなれません−左近少将との縁談もこと わられ、薫・匂宮との尋常な結婚生活ができなかったことを指す−で、所詮は生きて いられそうもなく存ぜられますので)」「(僧都」(女の若くしての出家はかえって 罪業をつくることになる)年月ふれば、女の御身といふもの、いとたしだいしきもの になん(当座はいかに堅固であっても、年月がたつと、女の御身というものはまこと に多難なものでして)」 6−379 54夢浮橋 「(横川僧都)髪、鬚を剃りたる法師だに、あやしき心は失せぬもあなり、なして 女の御身はいかがあらん、いとほしく、罪えぬべきわざにもあるべきかな(髪や鬚を 剃ってしまった法師ですら、あらぬ煩悩は捨てきれない者もあるそうな。まして女の 御身ではどんなものであろう。困ったものよ、罪作りなことになりかねまいな。)」