★ 第6回 ★
浜松の夢 巻一 1 中納言は故式部卿宮が唐の第三皇子に生まれ変わっているということを伝え聞き、 また、夢にも見て、孝養の志押さえ難く渡唐を決意し、帝と母上に三年の暇乞いをし て出発する。転生告知夢 2 后の父、唐の遣日使は秦の親王であったが、中国へ娘を連れて帰ろうとした時に、 親王の夢に海の竜王が現れて、この娘は唐の后になる人だから無事に渡れるだろうと 告げる。予知夢 4 唐で大君が中納言の夢にあらわれて「誰により涙の海に身を沈め しほるるあまと なりぬとか知る(私はいったい誰のせいで、涙の海に身を沈めて涙に濡れしおれる海 女となってしまっていると、あなたは知っていますか)」と詠んだ。告知夢 大君の あくがれいづる魂か 中納言「日の本のみつの浜松今宵こそ 我を恋ふらし夢に見えつれ」『浜松中納言』 の題名の由来 5 中納言は唐の后恋しさに寺に籠もると、夢にその寺の僧が現れて、「今一目よそに やは見む この世には さすがに深き仲の契りぞ(もう一度よそ目に后を見るのであ ろうか、いや、直接見あえるだろう。そうはいってもやはり深い二人の約束であるよ。)」 と告げる。告知夢 参籠 僧 6 中納言は若君をつれて帰国しようと考え、后は悲しむが、夢に「これはこの国の人 であるべきでない。日本のかためだから早く日本へ渡せ」と人がいうと見て、自分が 母に別れて渡唐したときの母の気持ちを思い合わせて、ことの報いを嘆く。指針夢 巻三 7 吉野尼君は中納言の来訪を得るが、今宵の夢に唐の后を見たおりがらなので、感動 は一方でない。予知夢 8 吉野尼君はこの三年ばかりは、「この姫君のたずき(便宜、いい男)を得させよ」 ということをのみ祈ってすごした夢に、尊げな僧が来て、「唐后が、夜昼、自分の母 君の様子を聞きたいと仏を念じている。その孝養の志はいみじく哀れであるが、異世 界の人となって別れてしまった後、この思いを叶えようもないから、日本の人に縁を 結んで、深い恋着心を起こさせて、その結果母君を大切にさせようと方便した。とこ ろが、ここにまたそなた(吉野尼君)がこの娘(吉野姫)のたずきを見おいて、ここ ろやすく後世を祈ろうと思う心が一つに行き合って、この娘のたずきもその日本人(中 納言)であるぞ。」と言ったと見ると、中納言の来訪を見た。参籠による夢告 僧 巻四 9 吉野尼君のことをしきりに夢に見るので出かけると、尼君は病床にあり、聖を呼ん で念仏を頼み、自らも念仏して大往生をとげる。予知夢 10 中納言はしきりに唐后病の夢を見るので心を痛めていたが、夜吉野姫と月を眺めて いると、空に声の限りして「唐后が今この世の縁がつきて天(無名草子によると「心 刀利天」)に生まれなさった」と三度言う。予知夢 巻五 11 中納言の夢に唐后が現れ「身をかえても一つ世にあらむと祈るあなたの心にひかれ て、吉野姫の腹に宿った」と言う。告知夢
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